「日本の伝統工芸って、海外だとほとんど見かけないよな。品質は間違いなく高いのに、もったいない」
バイヤーとしてよく海外に雑貨を買付にいくのだが、ふとこう思った。
「自分の手掛けた伝統工芸プロダクトが、海外のデパートに並んだら興奮するかも!」
そんな考えに至り、【伝統工芸プロダクトを作って、海外で売る】ことをやろうと真剣に思うようになった。
じゃあ、どうする?
カネもコネもない自分がどうすれば実現できるか、現実的な方法を検討してみた。
そして、以下の考えに至る。
伝統工芸プロダクトを自分で作って、海外で勝負してみたい。
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具体的に、どうやって勝負する?
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ここ1~2年、海外の展示会ではクラウドファンディングブースが大盛況。
クラファンに成功させたら、海外の有名デパートのバイヤーの目に留まるかも。
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2021年中に世界最大のクラファンサイト『KICKSTARTER』に伝統工芸プロダクトを出品し、達成させよう!
こうして、日本中の伝統工芸の工房を訪ね歩く旅が始まった。
今回は、“日本3大刃物”の1つである『土佐打ち刃物』を求めて高知へ向かった。
包丁は世界で最も人気のある伝統工芸プロダクト!
KICKSTARTERで達成しやすい伝統工芸プロダクトは何だろう?
ターゲットにしたのは、”包丁”だ。
理由はKICKSTARTERで過去に達成した日本発の伝統工芸プロダクトで、圧倒的1番人気が包丁だからである。
“Japanese”というワードで検索し、達成額の大きい順に並べ替えると、プロダクト系の上位5位のうち3つは包丁が占めていた。
※ちなみに残り2つはタオル。
引用: Kickstarter (「Japanese」で検索し、達成額の多い順に並べ替え)
こちらの商品が集めた金額は、なんと2200万円!
クラファンでは1000万円を超えたらビッグプロジェクトだ。
引用:『Kuroi Hana Knife Collection – Japanese Steel』 Kickstarter
最初はあまり奇はてらわず、過去の実績の高い包丁(刃物)で攻めてみよう。
そんなこんなで、刃物の名産地である高知への旅に至ったのである。
高知に到着!電車で約1時間、刃物工房が並ぶ”土佐山田”へ
高知駅に到着!
駅回りは背の高い建物がすくなく、すっきりしている。視界が開けて空も広い。
気持ちのいいところだ。
ヤシの木が並んでいて、どこかハワイのような雰囲気。
漁業の盛んな土地だけあって、港町の空気が漂っている。
今回の宿は駅から5分ほどの場所にあるホテルタウンセンター。
ネットで情報収集したところ、高知駅から電車で1時間ほどの土佐山田というエリアに刃物の工房が多数集まるエリアがあるらしい。
ホテルに荷物を置いて、さっそく土佐山田へ向かった。
駅前で自転車を借り、工房巡り!
土佐山田は駅前で無料の自転車貸し出しをやっていた。
工房間の距離は歩き出回るには少し距離があるので、これは非常にありがたい!
旅先でのサイクリングは楽しみの1つだ。
駅で見つけた工房案内のパンフレットをもとに工房のある住所へ向かってみたが…
パッと見は普通の一軒家。
商品を並べているわけでもなく、客を迎える造りになってないようだ。
他の工房も似たような感じだった。
「チャイムを鳴らしてお宅訪問するしかないのか?」
途方に暮れつつGoogleマップで「土佐打ち刃物」と検索してみると、近くに土佐刃物流通センター 協同組合という施設を発見。
「レビューが29件も入っているということは、訪れる人がけっこう多いに違いない」
そんな期待を抱いて、Googleマップを頼りに向かってみる。
地図の示す場所に到着すると、ようやく営業をしてそうな建物を見つけることができた。
中に入ってみると、少年心をくずぐるかっこいい包丁がお出迎え。
店内は包丁、鉈、鎌。あらゆる刃物で埋め尽くされていた。
なんだこれは!
お子様に初めて持たせる刃物を創ろうという職人の想いで生まれた「くじらナイフ」は、海外観光客からもお土産として人気なんだとか。
お店の人が、
「市販の包丁は一枚の金属板を削り出して刃物にしますが、手打ち刃物は特性の異なる3枚の金属板を重ねているんです。
そうすると切れ味があり錆びにくい優秀な刃物になるんですよ。砥石で定期的に手入れすれば、何十年でも切れ味を維持できます」
と教えてくれた。
(引用:日本刀と包丁 )
刃物の試用もさせて貰った。
紙に刃を当てると、スッと刃を動かすのに合わせてはらっと紙に切れ目が入った。
すご!気持ちいい。
スポーツでいいプレイができた時のような、全能感に近い高揚を感じる。
「切れ味のいい刃物って、こんなに心強いものなんだな!」
国を問わず歴史上で剣や刀が神聖なものとして扱われてきた理由が分かった気がする。
たまにキャンプに行くのだが、切れ味のいいナイフがあれば使いたくて仕方がなくなるだろう。
特に刃物を集める趣味はなかったのだが、切れ味の良い刃物を1つ手元に置いておきたくなった。
お土産に包丁を1本購入。
帰宅してさっそく使ってみた。
感動したのは、ぐずぐずに煮た玉ねぎやトマトでも崩れることなくスッと刃が入ること。
野菜の形をそのまま残すことができる。
筋張った肉も一度手を引いただけで簡単に切れる。
これは毎日の料理が楽しくなりそうだ。
切れ味の良い刃物は、思っていたよりも生活の質を上げてくれることを体感できた。
包丁で世界に勝負できるか。デザインの優れたの家庭用包丁はチャンスあり!
今回の旅では、切れ味の良い刃物が想像よりも人生を豊かにしてくれることを体験できた。
Kickstarterで圧倒的人気の日本プロダクトであるのも納得だ。
Kickstarterのみならず、海外の高級料理屋ではシェフがこぞって和包丁を使いたがるのだとか。
(参考記事:『なぜ外国人シェフは「日本の包丁」に惚れ込むのか』DIAMOND ONLINE)
高知の刃物工房も、数か月~数年の予約待ちというところが珍しくなかった。
そういう意味では、既に評価を得ているので目新しさはないと言える。
これから海外に勝負を仕掛けられる余地はあるのだろうか。
Kickstarterに関して言えば、まだまだ隙間はある。
例えば、”一般家庭向けのデザインに優れた、1万円くらいの包丁“だ。
Kickstarterで「Japanese Knife」で検索すると、デザイン的には ” The 包丁 ” という感じのシンプルはデザインのものばかりである。
引用:Kickstarter(「Japanese Knife」で検索し、達成額の多い順に並べ替え)
一方で、Makuakeで「包丁」と検索すると、達成額1000万円越えのビッグプロジェクトはスタイリッシュな包丁が多い。
引用:Makuake『包丁にもオシャレを。高級包丁をリーズナブルに。伝家の包丁「NiNJA」』達成額は1733万円
引用:Makuake『お家時間充実!自炊・家飲み料理を快適に!超軽量&切れ味抜群のブラックナイフが登場』達成額は1151万円
Kickstarterにはこのような目新しいデザインの包丁は見当たらない。
ここに ”MakuakeとKickstarterとのひずみ” がありそうだ。
また、“伝統技術を活用したナイフ”や
引用:Makuake『カーブが起こすナイフ革命。 家でも外でも、包丁感覚で使える折畳式料理ナイフ』達成額は801万円
“伝統技術を活用したハサミ”。
引用:Makuake『まるでハサミの形をした包丁。 高級包丁の技術を注ぎ込んだダマスカス鋼キッチン鋏』達成額は813万円
Makuakeにはこのような800万円越えの達成額の高いプロジェクトがあるが、Kickstarterでは見当たらない。
”ナイフ”と”ハサミ”にも、MakuakeとKickstarterのひずみがありそうだ。
今回の高知旅では、”刃物がいかに人生を豊かにしてくれるか”を実感できたのが一番の収穫だった。
日本の伝統的な刃物が世界的に見て極めて優秀であるということも、現地の人との会話で納得することができた。
やっぱり実際に足を運んで五感を使って体験をすると、ネットでは得られない情報が手に入る。
そうすると、アイデアもぽつぽつと浮かんでくる。
収穫の多い旅だった。
これから、デザインの凝った包丁かナイフか、もしくはハサミでKickstarterに出品する準備を進めていく予定だ。
そちらも進展があったらまた記事にしよう。
高知はダイナミックな自然、新鮮な魚がぎゅっと詰まった街!
『高知旅 エンジョイ編 ~雄大な自然と、新鮮な海鮮がぎゅっと詰まった街~』に続きます。
[…] 『世界に通じる伝統工芸探しの旅。“日本3大刃物”を求め高知へ』の続きです。 […]